【MOTHER2】PKフリーズに感じたバトルバランスの未来設計

ゲームのバトルバランスについて考えを巡らせる時に必ずといっていいほど僕の脳裏に浮かぶのが「MOTHER2」のPKフリーズだ。 このPKフリーズを簡単に説明すると、同レベルの雑魚を一撃で葬れる攻撃魔法といったところだ。 

作中ではPSIと呼ばれる技能だが、ここでは分かりやすいように攻撃魔法と表現する。

 



このPKフリーズ、もちろん耐性を持つ敵もいるが、大体半数以上の敵に素の威力が通る。PKフリーズには4段階の種類があって上位のものは威力も段違いになる。

当たれば問答無用で雑魚が一体はじけ飛ぶこのPKフリーズは当時子供心ながら大変驚きを覚えた、というか今でも驚いてる。すげえ。RPGは「戦闘の繰り返し」が核にあるジャンルだ。だからこそ、戦闘のテンポやバランスはプレイヤー体験に直結する。

MOTHER2におけるPKフリーズは、まさにそのデザイン上の妙を象徴する魔法だった。

PKフリーズは、一撃で同レベル帯の雑魚を倒せることが多い。しかも下位のものは序盤から使用する事が可能で、PP(いわゆるMP)消費量も少なめだ。このシンプルな設計がどれほど画期的だったかを理解するには、当時のRPG状況を思い出す必要がある。

当時のRPGには、とにかく雑魚モンスターが硬いタイトルがしばしばあった。無駄にタフで、攻撃を何度も繰り返さなければならず、倒しても経験値やお金は微々たるもの。結果として、戦闘は時間を奪うだけの作業に堕してしまう。これはゲームテンポを著しく損ない、プレイヤーのモチベーションを削ぐ事も多かった。

ここでPKフリーズが放つ意義は大きい。
「問答無用で雑魚を一体排除できる」=「戦闘テンポをデザイナーが意識的に制御している」ことの証明だからだ。つまり、MOTHER2の戦闘デザインは「戦闘をただ長引かせない」「不要なストレスを削ぎ落とす」という発想を早くも取り入れていた。PKフリーズに限った事ではなく、本作は敵との戦力差が大きい場合は、敵シンボルに接触した瞬間に戦闘をスキップして勝利するシステムがあり、そこからもゲームテンポについては明確に意識されていることが分かるだろう。

RPGにおける戦闘は、ゲームの中心部分を担うと同時に、最大の問題にもなり得た。PKフリーズの存在は、その両義性に対するMOTHER2スタッフからの答えだったのだろう。「プレイヤーが戦闘に飽きる前に、戦闘を終わらせる手段を渡す」――この設計思想こそ、ゲームを面白くし続けるためのもっともシンプルかつ強力なデザイン原理ではないか。

PKフリーズは単なる攻撃魔法ではない。
それは“テンポ設計の象徴”であり、90年代RPGにおける未来的な一手だ。
これほど美しい魔法を、僕は他に知らない。