百八の数珠を作った話

『ファイナルファンタジータクティクス(FFT)』というゲームに「百八の数珠」というアイテムが登場する。

『Vampire Survivors』にも同名のアイテムが存在するが、今回はFFTのアイテムの話をしよう。




百八の数珠。
名前の通り、煩悩の数である108つ分の数珠を繋げたアイテムなんだろう。
このアイテムを装備すると多くの状態異常を予防する事ができるので、なかなか使い勝手が良く、好んで装備していたプレイヤーも多いはずだ。

小学生の頃に僕はFFTに熱中していて、実際にこの百八の数珠を手作りしたことがある。

近所の草むらに生えているジュズダマから数珠を取ってきて、108個集める。一つ一つ芯の繊維を抜き取り、家庭科の裁縫道具から糸を取り出し、芯を抜いた空洞の中をつなぎ合わせる。108個の数珠を使った、本物の百八の数珠の完成だ。

"リアル百八の数珠"を作る。ゲームの中のアイテムを現実に具現化させるという試みに成功し、なんとも心地よい達成感があったことを覚えている。

子供というのは気の移りがはやいもの。そんなリアル百八の数珠への興味も数日で無くなり、どこかへ仕舞っておいてそのまま。そして時は流れる。小学生から中学生へ、中学生から高校生へ、十年、二十年。それ以上。


つい昨日、部屋の模様替えをしようとしてあちこちの物品を忙しなく動かしていたところ、古い古い段ボールに収納していた、小さな箱を床に落としてしまった。

瞬間、何かが散らばった。




それは小学生の頃に作り上げたリアル百八の数珠に使われていたジュズダマだった。

まさか、今の家に引っ越してくる時に大事に持ってきていたのか。それすらも思い出せないが、紛れもなくこれはあの頃に一生懸命108個数えて集めたジュズダマだ。

108個。
あれだけ苦労して集めたはずのジュズダマ。
草むらを歩き回り、一粒ずつ数え、糸を通して作り上げた百八の数珠。
その成れの果てが、今、目の前に転がっている。

4個。4個である。
残りの104個はどこへ行ったのだろう。

糸が切れて部屋のどこかに散ったのかもしれないし、引っ越しの時に失われたのかもしれない。あるいは、とうの昔に掃除機に吸い込まれ、ゴミとして旅立っていったのかもしれない。理由は分からない。分からないが、一つだけ確かなことがある。

百八の数珠なのに、4個しか残っていない。状態異常どころか、もはや数珠としての体裁すら保てていないのである。しかし不思議なものだ。たった4個のジュズダマを見ただけで、近所の草むらの風景や、家庭科の裁縫箱を漁ったことや、完成した時の得意げな気持ちまで思い出してしまった。そう考えると、残ったのが4個だけでも十分なのかもしれない。

108個の煩悩を払う力は失われてしまったが、20年以上前の記憶を呼び起こす力だけは残っていたらしい。FFTの百八の数珠は状態異常を防ぐアイテムだった。現実の百八の数珠は、歳月という名の状態異常によって曖昧になった少年の日々を、ほんのひとときだけ治療してくれた。